人事・労務情報

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ストレッサーの解消は難しいが・・・・・

 

前回の記事では、「メンタルヘルス対策には、ストレッサーを解消するアプローチがどうしても必要」と書きました。ところが、現実に人事がそれをやろうとすると多くの障害に直面します。代表的なのは、以下のような例です。

 

①守秘義務が障害となるケース
EAP等で専門のカウンセラーに委託したり、ヘルスケアの専属スタッフがいるようなケースでは、守秘義務の関係から、本人から聞いた情報がすべて人事に入ってくるということはありません。その結果、肝心の『ストレッサー』の所在について人事が正しく把握できないことがあります。

 

②誰が悪いのかを見極めるのが難しいケース
例えば、ストレッサーが上司だということが分かったとして、上司のほうに問題があればその上司の異動や離任を考えるべきですし、そうでなければ本人の異動を検討する必要があります。しかし、現実はどちらとも言えるという状況が多く、その判断が難しいのです。

 

③本人の能力に根本的な原因があるケース
求められる仕事のレベルと本人能力とのギャップがストレッサーになっているケースはとても多いのですが、このストレッサーを解消するには「辞めて別の道を探すしかない」ということになります。職場や担当業務を変えたところで、まず問題は解決しません。

 

④極めて困難な課題に突き当たってしまうケース
ストレッサーを追求していくと、「恒常的な残業」とか「業績達成へのプレッシャーが強く余裕のない風土」のように、会社が構造的に抱える問題に突き当たることがあります。これには、『分かっちゃいるけど、すぐに手が打てる問題ではない』と、人事担当者の腰も引けることになりがちです。余談ですが、このケースは『以前から問題を指摘しているのに、人事はちっとも動かない』と、カウンセラーや産業医からの不信感のタネになることが多いです。

 

 

このように、ストレッサー解消と言葉で言うのは簡単ですが、具体策を考えようとすると、非常に難しく「どうしようもない」と思えることが人事担当者の前に立ちふさがります。

 

しかしながら、メンタル疾病で問題となっている社員の増加や、その他顕在化している労務問題のことを考えると、これらのハードな課題に(中長期的な視点で)正面から取り組むことが、避けては通れない時代になっていると思います。
できない理由を挙げて、当面できること(=どこの会社でもやっているようなメンタルヘルス対策)をやってお茶を濁すというのでなく、『難しいけど何とかしよう』という意識で改革に取り組む人事担当者を支援する・・・・・私としては、そんな仕事ができれば本望です。