人事・労務情報

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地域限定社員制度とキャリアコース複線化

 

地域限定社員制度とキャリアコース複線化(=専門コースの設置)。
この2つは、私が今まで人事の仕事をしてきた中で何度も課題にのぼってきました。

 

しかし、人事部時代もその後コンサルを始めてからも、一度も制度として実現させたことはありません。何回も何回も『検討はしてみたが結論として見送った』という結果になっています。

 

固定したコースを設け、それを長期的に保障していくことは弊害が多いのです。

 

地域限定社員の議論はたいていの場合、「転勤をしている人からみて不公平なので転勤できない人の待遇を下げよう」という発想から始まります。これでは、転勤族の溜飲を下げる効果があるだけで、社員のモチベーションアップや成果の向上にはつながりません。

 

キャリアコース複線化は、「担当者として専門性を深めるコース」を設けることで、リーダー志向のない人の納得感を高めようというのがねらいです。しかし、例えば雑誌の編集者が「編集専門コース」として認められたとして、その仕事が数年先も存在すると誰が保障できるのでしょうか? 逆に専門コースの人たちが将来的な組織改革のネックになるという可能性も高いでしょう。

 

そもそも、キャリアにコースがあるという考え方自体が、この変化の時代にはそぐわないと思います。多様化の時代だから、働き方にも多様性を認めようというのは大いに結構ですが、だからといって制度でパターン分類してしまうということは、長い目で見ると社員にも会社にもメリットをもたらさないのではないでしょうか。

 

多様な価値観を受け入れ、それをできるだけ尊重するという方針は打ち出すが、キャリアというのは極めて流動性が高いものであるという性質に鑑み、異動・配置を固定化するような制度はやらない、というスタンスを持つのが望ましいと、私は考えています。