人事・労務情報

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『年齢給』の不思議

 

すべての人事施策の目的は、職場の生産性向上です。

 

ですから、人事制度自体に「いい悪い」はなく、古い人事制度でもその会社の人の育成と業績向上につながるものなら何も問題はないわけです。実際の制度コンサルにあたっても、その会社の特性によってはあえて古典的な制度を提案することも少なくありません。

 

 

しかし、そんな中、私にはどうしても理解できない制度があります。

 

それが『年齢給』です。

 

いわゆる「古い人事制度」の典型で、最近では姿を消したのかと思いきや、なかなかどうして根強い人気(?)を誇っています。

 

 

年齢給を入れる理由を聞くと、たいてい「(一定の年齢になるまでは)歳を重ねるにしたがって生計費がかかるようになるから」という答えが返ってきます。

 

本当にそうでしょうか?

 

 

確かに、年齢別生計費データ(実はこのデータ自体もかなり怪しいのですが)を見ると50歳くらいまでは年齢と生計費が比例しています。「ほら見ろ、これが現実だ」という声が聞こえてきそうですが、私は逆にこのように考えます。
「人はもらう給与水準に合わせて生活している」

 

つまり、年齢が上がるから生計費がかかるのではなく、現実に(平均的には)年齢が上の人ほど給与をもらっているので生計費も増えているという解釈の方が自然だと思うのです。

 

 

「30歳の人よりも40歳の人の方が生活にお金がかかる」と言われると「なるほど、そうかも」と思ってしまいがちですが、よくよく考えると論理的な根拠に乏しいことがわかります。

 

こう言うと、「生計費は結婚・出産を前提としていて、家族を養うためのお金がかかるのだ」という反論が返ってきますが、それに対して会社が給与にて支援をするという方針であれば家族手当等で対応すればいい話です。何も家族構成や扶養状況に関係なく一律で昇給させる必要はありません。

 

 

私なりに結論付けると、年齢給は従業員や労働組合を表面的に納得させる方便(まやかし)にすぎません。「会社として、歳をとること自体に価値を認める」という大方針がない限り、撤廃すべきものと考えます。