人事・労務情報

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固定残業代制の現状について

 

(ホワイトカラーの職場というのが前提ですが)固定残業代制というのは、現行の法制下では有効な制度であると、私は考えています。

 

適正に運用すれば、社員に不利益はなく、会社としても「時間ではなく役割や成果に応じた給与」に近づけることができますし、また、長時間労働解消に向けたインセンティブ(=ダラダラ残業の削減)として活用することもできるからです。

 

 

ところが、現状のマスコミ報道や労働行政の対応を見ると、どちらかと言えば『労働者にとってデメリットのある、よくない制度』との扱いを受ける傾向にあります。
例えば、厚生労働省からは、あたかも「固定残業に休日分や深夜分を含めて金額で定めるのはNG」と言わんばかりのものも含めて細かな基準が示される(これは法令や判例の基準を超えた過剰なものとの批判もありますが)など、制度の柔軟な運用を許さないような規制が強化されている状況です。

 

 

ただ、それもこれまでいくつかの会社が以下のような「悪用」とも言える運用をしてきたことが背景にあるため、労働者保護の観点からはやむを得ない部分があるのでしょう。
①低い月給を高く見せるため、固定残業代を含めた総額を「基本給」として求人を行う
②さらに、○○時間までの残業は基本給に含まれることを、社員本人は後から知り、「騙された!」という顛末になる
③固定残業代を超える残業をしても、差額の支給はしない
  等々

 

私は元来、「使用者と労働者の利害は相反し、使用者は放っておくと搾取しようとする(だから労働者を保護しなければならない)」という労働法の基本スタンスが好きではないのですが、上記のような現実があることを考えると、是として認めざるを得ないのかも・・・・と感じます。

 

 

法的規制の強化によって、人事制度設計の自由度が小さくなっているというのは多くの人事関係者が実感していることでしょう。
もちろん、会社の暴走は防がなければなりませんが、果たしてそれが社会全体の労働生産性向上に向かっているのか、と考えると、それはそれで大きな疑問です。
本当に難しい時代ですね。