人事・労務情報

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残業削減を成功させるための方法

 

多くの会社にとって、残業削減はメンタルヘルスの問題と並んで労務管理の大きな課題となっています。しかし、数年前から取り組んではいるものの、なかなか効果があがらないというケースが多いのではないでしょうか。

 

私の知っている「残業削減に成功した会社の事例」の共通点は、トップがその『信念』に基づいて大号令を発し、それが現場で徹底されているということです。

 

 

『信念』とは、「理屈では説明できない、本人の勝手な思い込み」ということができますから、論理的に考えて必ずしも正しいとは思えないものもありますが、社員の多くが感覚的に『まあ、そうだよね』と思えて、潜在意識にすり込めるものであればいいのです。

 

例えば、『残業したら罰金!』で有名なトリンプ社の元社長・吉越浩一郎さんは、その著書【「残業ゼロ」の仕事力】の中で、このように主張されています。

 

《引用》
・残業は会社にとって「善」どころか、経営にマイナス影響を及ぼす「悪」そのもの
・仕事は人生そのものではなく、人生の一部です。私にとっての働く意味は「生きていくために必要なお金を稼ぐため」であって、それ以上ではありません。
・会社にとってみれば、社員が仕事で自己実現していようがいまいが、はっきりいって関係ない話です。そんなことより、大事なのは仕事ができるか、つまりは結果を出せるかに決まっています。

《引用ここまで》

 

そして、日常のマネジメントにおいては、決めたことはとにかく徹底すること、一切の例外は認めないというスタンスで臨むことが重要です。もちろん、徹底の過程では様々な社内の抵抗(それも、客観的に見て「もっともだ」と思える抵抗)があるでしょうが、どんなに反対されてもルールを貫き通す覚悟が、どうしても必要です。

 

逆に言えば、残業削減を成功させるための方法は、この《トップの信念とルールの徹底》しかないと思っています。実際は、「皆がさっさと仕事を切り上げて帰るようになったせいで業績が落ちた」ということがあってはいけませんから、ただ『残業全面禁止!早く帰れ!』の号令だけでは不十分なことは言うまでもありませんが、これが最重要ポイントであることは間違いありません。

 

残業問題で困っている会社の多くは、トップの方針や覚悟があいまいな中で、現場の感情などにも配慮しながら「少しでも残業を減らすための施策」をチマチマ考えている傾向があります。問題が複雑で、長年にわたって解決できていない課題への対処は、『リスクを恐れず、今までとは違った発想から大きく方向転換する』—–これが基本だと、私は考えます。