人事・労務情報

02
19

給与ダウン時の補填をどこまでやるか

 

給与制度改定時につきものなのが、「制度改定によって給与が下がってしまう人の対応をどうするか」という問題です。

 

改定内容によっては、理論値で年収数百万円ダウンということもありますので、本人の心情・生活、さらには周囲に与える影響なども考慮しながら、慎重に対応を考えていかざるを得ません。労働組合との調整も必要です。

 

現実的には、「調整給」「移行手当」等の名称で、一定の条件付補填を行うというケースがほとんどでしょう。

 

 

この補填内容についてはケースバイケースで検討するべきであり、『標準』となるようなものはないのですが、私の経験上、以下の範囲内で制度運用ルールが決まることが多いです。

 

①かなりドラスティックなパターン
・給与ダウン幅が前年比10%を超える場合、その超過分を補填
・期間は1年間に限る
・賞与における補填は行わない

 

②かなり保守的なパターン
・給与ダウン分全額を補填する
・期間は3年間
・補填額は賞与の基準額に組み込む

 

 

もちろん、トラブルを未然に防ぐという意味では②に近い対応をとった方がいいのですが、コストが膨らむという問題に加え、あまり既得権の保護をしすぎると周囲の人の納得感を損なう可能性も大いにありますので、会社の風土や現状の社員意識を十分に踏まえた設定が必要になります。

 

ここで決め手となるのが、その会社の『人事ポリシー』であり、制度改定における『方針・哲学』です。この部分がグラついていては、色々な人の価値観が錯綜して収拾がつかなくなる可能性が大きくなると言えるでしょう。

 

 

以前、お客様から「人事制度改定に最も必要なものは?」と聞かれた時、私は「経営トップの熱意と覚悟」と答えました。その考えは今でも変わっていませんし、こういう一つひとつの課題をクリアするための必要条件でもあることを、日々痛感しています。