人事・労務情報

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育成目的の人事異動のワナ

 

タイミングのいい人事異動が社員の育成につながる、ということには誰も異論がないでしょう。それまでとは違う仕事で視野を広げさせる、複数の専門性を身につけてもらう等々は、「中長期的な人事マネジメント」のセオリーとも言えます。

 

しかし、それを承知で言うのですが、「育成を目的とした人事異動」はうまくいかないケースが多いというのも事実です。
典型的なのは、人事はその人の成長を考えて異動を決めたものの、異動先で大した仕事を与えられず、能力発揮のチャンスもないまましぼんでいくといったパターンです。

 

 

人を育てるのは「単なる業務経験」ではなく「手ごたえのある仕事ですから、ただ仕事を変えるだけでなく、重要な仕事・テーマを与えなくては意味がありません。その点では、人事異動を受け入れ部門主導で進めていくというプロセスがどうしても必要です。

 

ジョブローテーションをしくみとして運用するとか、意識的に複数の職種を経験させるといった方針など、それはそれでけっこうなことですが、会社としての中長期的な視点と、部門としての短期的視点(業績向上のための人財活用)との折り合いをきちんとつけていくことが求められるのではないでしょうか。

 

異動先がしぶしぶ受け入れたケースでは、業績向上も人財育成の効果も期待できない(=単なる人事上の社内調整にすぎない)というのが、人事異動における鉄則であると、私は思います。