人事・労務情報

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「自分の将来が見えない」という不満について

 

人事制度改定を検討するプロセスなどで社員にヒアリングをしたときに、ずいぶん前から多く聞かれるのが「自分の将来のキャリアが見えない」という不安・不満です。

 

確かに、社会的にも中長期的なネガティブ要因が多いですし、自分の先輩たちの歩んできた道がほとんど参考にならない昨今、「将来に向けて信じられる何か」が欲しいという気持ちが生じるのは、よく分かる話です。

 

しかし、だからと言って、短絡的に(人事制度として)専門職コースや地域限定コースを作ることは必ずしも勧められません。数年先もその職種、その事業所がその会社にあるということは誰も保障できませんし、期待をさせておいて途中でハシゴを外すことはとても罪の大きなことだと考えているからです。

 

ところで、「先が見えない」というのはそんなに悪いことなのでしょうか?

 

もちろん、将来の成功イメージを明確にイメージできた方がモチベーションも上がるでしょう。でも、それは“ないものねだり”ということも分かっているわけですから、ここは発想を転換して「選択肢が多い」「自由度が高い」というふうに現在の状況をポジティブにとらえた方がよいのではないでしょうか?

 

例えば、多くの会社で『キャリア研修』を実施していると思いますが、ここでは、予見できない将来に向かってのキャリアビジョン・キャリアプラン作成などを行うのではなく、「将来のキャリアは見えなくて当たり前」ということを前提に、数え切れないほどの選択肢といかに付き合っていくか、その試行錯誤を効果的に行うための行動はどうあるべきかといった『今後の行動様式を考える場』にすべきと考えます。その方が一人ひとりの主体的・自律的キャリア形成の意識醸成に効果があると思うのです。

 

まさに、
「危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし」
「迷わず行けよ、行けばわかるさ」

の精神が、今の時代のキャリア形成にはマッチするのかもしれません。