人事・労務情報

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流行りの制度がうまくいかないワケ

 

私が初めて人事制度設計の仕事に関わってから20年以上になりますが、会社において人事制度を有効に機能させることの難易度は年々上がってきているような気がします。
以前は、他社の事例を「右に倣え」で導入しても何とかなるような、汎用性のある制度も少なくありませんでした(職能資格制度、ポイント制退職金、各種手当等々)しかし、今はそうはいきません。

 

例えば、「在宅勤務」「朝型勤務」「裁量労働」等の制度を導入・拡大することによって生産性向上をねらう会社の事例が、最近の人事系雑誌で紹介されていましたが、これらの勤務制度一つとってみても、制度だけそのまま真似ようとすれば「導入すれども機能せず」の状況に陥る可能性大と言えるでしょう。安易に導入すると、その会社の組織風土を壊してしまう危険性すらあります。

 

 

それだけ、人事マネジメントにおける課題は複雑化しているということです。
人事制度のトレンド(流行り)というものが意味をもたなくなってきており、自社流の課題解決をするための独自のアプローチなくして有効な人事制度は成立しない時代になっているのです。

 

「独自のアプローチ」を具体的に言うと、
人事ポリシー(人のマネジメントにおける会社としての信念)を明確にする
自社の課題を抽出・分析し、解決のための仮説を立てる
ここまでの段階で社内での議論を十分に重ね、ある程度ブラッシュアップされたポリシーや仮説に基づいて制度詳細を設計していく
といった感じです。

 

仕事柄、制度の失敗事例もかなり目にしてきたのですが、その多くがこのようなプロセスを経ない「方法論ありきの制度導入」をしてしまったケースです。特に社長や役員らが「流行りの制度」に目を奪われて最初から方法論を指示してしまうと、人事スタッフが思考停止になってしまう傾向もあるように思います。

 

 

私も会社員時代、「地に足のついた企画を立てろ」と何度も言われたものですが、『トレンドや社外の情報に振り回されない』というのは、これからの人事部員の必須要件となるかもしれませんね。