人事・労務情報

02
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出口が見えない「残業問題」

 

多くの会社にとって積年の課題となっている「残業問題」、私がこれまで関わった会社でも色々な手を打ってきたものの、「解決した」「改善された」という事例は、残念ながらかなり少数です。

 

残業が多いので少しでも減らしていきたい、という考え方は労使で一致しているにもかかわらず、これだけ改善が進まないのはちょっと不思議な感じもします。しかし、それだけ根の深い問題だということですね。
一気に残業問題を解決する特効薬はなさそうなのですが、解決に向けての糸口を少し考察したいと思います。

 

 

まず残業が多くなって、何が問題かというと、以下のように集約されます。
①会社のコストがアップする
②仕事の能率が悪い人ほど収入が多くなるという矛盾が発生する
③社員の健康を害する恐れがある
④労働生産性に対する意識の低い組織風土が作られてしまう

 

「残業問題を解決する」ということはこれらすべての問題点・リスクに対してアプローチする必要があるということです。これは一つや二つの施策でクリアすることは極めて困難であると言えます。

 

裁量労働制や固定残業代制を入れれば「早く帰っても遅くまで仕事をしても給料はほぼ同じ」なので、社員が早く帰ろうとする力学が働いて生産性が上がる=上記①②③④すべてに効果があると考えがちなのですが、実際はそれで労働時間が減ったというケースはほとんどありません
①②にはある程度の効果がある(固定残業の場合は②のみ)ものの、③④はまず改善されないと思った方がよいでしょう。
「残業代稼ぎのために残っている」という人も中にはいるでしょうが、やはり多くは「仕事が多くて帰りたくても帰れない」という意識で残業しているということです。

 

 

つまり、人事制度だけで対応するのではなく、職場のマネジメントにおけるルールやしくみづくりと合わせて複合的に取り組んでいくことがどうしても必要になります。特に「実態としての時間短縮」を進めて③④の効果をあげるためには現場の主体的な動きが不可欠です。
具体的には、
・8時以降の残業全面禁止
・ノー残業デーの増設と徹底
・各部に残業削減委員会を設置
・各部での削減目標設定~達成率の全社公開
・残業を「完全命令制」にする
などが挙げられます。これらを自社・自部門に合った形で多面的に展開していくイメージです。

 

 

口で言うのは簡単ですが、仕事の難易度が増す中で自らに制約を課し、その中で成果をあげていくというのは本当に難しいことです。とても一朝一夕に小手先のテクニックで解決できるものではないという基本認識に立つしかありません。
だからこそ、常々私が主張している「人の成長を本位とした人事施策」を中長期的に実施することで、人と組織の力量を底上げしていくことが重要なのだと考えます。

 

 

まだまだ出口の見えない問題ですが、粘り強く取り組んでいきたいものです。