人事・労務情報

01
26

キャリアと「やり直し」

 

少し前の話ですが、長女が「キャリアデザインシート」なるもの(高校の進路指導の一環らしい)を書いていたので、ちょっと見せてもらいました。
自分の将来像をイメージしながらキャリア目標を定め、そこに近づいていくための手段を考えるという「長期目標分解型のアプローチ」の是非はあるものの、いかに目的意識を持った進路選択をさせるかという点に学校側が苦心していることがよく分かりました。

 

また、全体的なトーンとして、仕事において専門性を身につけ発揮していくことの重要性を理解させようという意図もあるように感じたのですが、この「専門性重視」の考え方は、学生のみならず社会人の意識においても非常に強くなってきており、多くの人が、手に職をつけること(≒資格をとること)や明確な得意分野を持つことの必要性を声高に叫んでいるというのが現状であります。

 

 

もちろん、この考え方は『会社が求める人材像』にも一致していますし、「専門性深化」は間違いなくこれからの育成・キャリア形成のキーワードであると言えるでしょう。

 

しかしながら、一方で、仕事を特定の分野に絞っていくことは少なからずリスクを伴います。これまでは技術の分野でよく見られた傾向ですが、想定外の環境変化でせっかく身につけた専門性が一気に陳腐化する可能性はあらゆる分野に広がっており、「専門性があるから今後は安泰」とは言えない時代になっています。

 

つまり、専門性深化が求められつつも「この道一筋」で長く働いていくことは難しく、ましてや「専門性を確立した後は、これまでの貯金で食っていく」ことはまずムリということです。
そうなると、「長いキャリア人生の中ではどうしても何度か【やり直し】を迫られる」ということを前提にキャリアにおける専門性を考えた方がよいのではないかと思います。

 

 

年をとればとるほど【やり直し】をすることには勇気がいりますが、逆に言えば年齢に関係なく前向きな【やり直し】をする人が増えれば、若い人のキャリア形成の考え方にもいい影響を与えることができるでしょう。

 

ただ、財務や法務などの普遍性の高い分野の専門性については、大きくキャリアチェンジするような【やり直し】は求められないかも知れません。それでも経験の積み重ねだけでは通用せず、意識的な【学び直し】をしていくことは不可欠です。

 

私も含め、あらゆる世代で「自己のキャリアを見つめ、アクションを起こしていく」ことが重要視されていますが、これは自分自身のことだけでなく、子どもたちの世代のキャリア観・職業観にも大きな影響を及ぼすということを視野に入れ、前向きな【やり直し】【学び直し】に積極的にトライしていきたいものです。