人事・労務情報

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それは社員に聞くな!

 

人事制度の改定を考えているとき、大抵は初期段階で社員にインタビューやアンケートをします。また、特に労働組合のない会社などでは部門から代表者を募って「検討委員会」を設けたりすることも少なくありません。

 

これらは、現場の実情にそぐわない制度を作ってしまわないためにも必要なことなのですが、主管する人事部門の担当者として注意しなければならないことがあります。

 

それは、『人事施策に関する社員の声は、大半が現状の不平不満である』ということです。

 

満足度を上げるための2つの要因として、『衛生要因』と『促進要因』があると言われますが、現状に対する不平不満を解決することは衛生要因にアプローチすることであり、これはこれで優先順位の高いことです。

 

しかし、一方で促進要因にも目を向け、これを強化するアプローチも忘れてはいけません。そこから導かれる施策こそが、社員のモチベーションを上げ、職場を活性化し、社員成長や業績向上につながる施策になるからです。

 

ただし、「あなたはどうすればモチベーションが上がりますか?」という《促進要因は何か》をダイレクトに聞くような質問では、あまりに芸がありません。漫然とこのような質問を投げかけても「こういう制度があればやる気が出る」「仕事を面白くするためにこういうしくみが欲しい」という声はなかなか出てこないでしょう。社員感情としては「まずはこの不満を何とかして欲しい」という意識の方が強く働くので、どうしても衛生要因ばかりがクローズアップされるというのが、一般的な傾向です。

 

こういった傾向があることを十分に留意して『社員の声』を企画に反映させるべきですし、できれば促進要因に関する社員の潜在的希望などにフォーカスした意見収集のあり方を、人事部門は知恵を絞って考える必要があると思います。

 

商品のマーケティングに関して「顧客に欲しいものを聞いてはいけない。人は見たこともないものは欲しがれないからだ」という言葉がありますが、人事施策もこれに似たところがあるかもしれませんね。