人事・労務情報
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「目標管理による業績評価」の限界
評価制度における昔ながらの手法の一つに「目標管理による業績評価」があります。期首に各自が組織目標をブレイクダウンして個人目標を立て、期末にその達成度をみて評価を決定するというものです。現代においても、多くの会社が導入しているしくみですが、最近はその限界が目立ってきたように思います。
「目標管理のしくみ」自体に異を唱えるのではありません。問題は『達成度によって評価が決まる』という考え方にあります。事業目標に絶対的な責任を負う経営幹部はいいとしても、一般社員にまでこれを適用すると大抵の場合うまくいきません。その大きな要因として、変化の激しい外部環境の中で、予定調和的な仕事が減ってきている(=やってみなければ分からない仕事が増えている)ことが挙げられます。つまり、期首に立てた目標が期の途中でどんどん意味のないものになっていくケースが増えているということです。
すると当然、期末の評価基準はあいまいなものになり、「達成率で評価される」と思っていた社員は、評価理由のフィードバックを受けても納得がいかないということになりがちです。
繰り返しますが、「目標管理のしくみ」はきちんと運用すれば成果の向上を促す効果がありますので、これをやめようということではありません。あくまで、目標管理は『仕事のマネジメントの手段』として使って、評価との結びつきを少し緩やかなものにした方がいいのではないか、というのが私の考え方です。
具体的には、業績評価の基準は精緻に定めるのでなく、【部門の短期業績への貢献】【中長期的視点での業務改革】【組織力向上への貢献】【顧客満足度の向上】など、ざっくりと着眼点のみを決めておき、結果を見てそれが期待通りだったのかどうかを話し合う、というスタイルが考えられます。その際、例えば「売上目標達成度」は【部門の短期業績への貢献】を判定する材料になります。
もちろん、デジタルに判定することはできませんから、相互評価のしくみで客観性を担保するなどの工夫が必要ですし、貢献期待のハードルが高い人が損をしないよう役割給のしくみを導入するなど、制度全体を抜本的に見直す必要性も生じるでしょう。
評価のことは、考えれば考えるほど、以前の記事に書いた「評価はデジタル・機械的ではなく、極めてアナログで人間的なもの」という発想に行きつきます。だからこそ興味のつきないテーマでもあるのでしょうね。