人事・労務情報

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M&A時の人事課題

 

昨今では経営戦略上の選択肢として「M&A」を活用することが決して特別なことではなくなってきました。それは中小企業においても同様で、例えば後継者不在の企業が「事業承継」の手段として他社への売却を検討するといったケースは、今後も増えていくことが予想されます。

 

M&A時には、「事業戦略の再構築」「財務対応」「株式等の統治基盤の整備」「人事・組織対応」等の重要案件が目白押しとなりますが、中でも長い目で見て最も重要なのが「人事・組織対応」ではないかと私は考えています。

 

多くの会社にとっての最大の経営資源は「人」ですから、色々な経営資源が移動して新しい価値を構築しようとする時に、「人事・組織上の課題解決」に重きを置くことは、ある意味当然のことと言えるでしょう。

 

 

それでは、会社が合併・統合される際の、人事・組織における最大の課題は何でしょうか?

 

これは、「価値観・文化の異なる組織を一つにまとめ、新たな組織風土を作り上げていくこと」だと思います。
形の上では組織統合されたとしても人の意識はまとまらず、合併から10年以上経っても異なる組織風土が存在し、派閥としての対立構造すら生まれている——という例は少なくありません(『半沢直樹』の東京中央銀行もそんな設定でしたね)。
特に中小企業においては、組織としてのまとまりがなければ会社の生産性に直接響いてきますし、一度バラバラになった組織風土を修復するのは至難の業です。

 

 

この課題をクリアするために何をなすべきか、という話ですが、
特別なことではなく、会社が新しいスタートを切るという位置づけで、以下のような「経営リーダーシップの基本的事項」を丁寧に実施することだと考えます。

 

①経営理念・目標の明確化と共有
→この中で「人事ポリシー」についても明確に打ち出す。

 

②従業員一人ひとりに対する動機づけ
→面談等により、経営者との新しい関係性を作っていく。

 

具体的な組織・人事戦略を実行していくのはこの後です。決して「まず新人事制度を作り、一つの管理ルールを当てはめる」といったことを先行させてはいけません。

 

 

M&A時だからといって、人事マネジメントの原則が変わることはありません。
むしろ色々なものが再構築される時期だからこそ、「人と経営の本質」をゼロベースで考え、従前からあった課題も同時に解決できる絶好のチャンスだと言えるかもしれませんね。