人事・労務情報

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「ESなくしてCSなし」は本当か?

 

その昔、CSという言葉が広まって、多くの企業がこぞって‘CS経営’に取り組んでいた頃、ほぼ同時に「ES」という言葉も使われだしたような記憶があります。

 

そして、初めて「ESなくしてCSなし」というフレーズを耳にしたのもその頃でしょうか? 「CS、CSと言っても、会社の従業員がいきいきと働いていない会社では、顧客が喜んでくれるような価値提供を継続的にすることはできないよ」——といった意味合いで語られ、人事部の人間はこれからの仕事のあり方について考えさせられたものでした。

 

 

しかし、最近、ある経営者の方が事例発表でそのフレーズを使うのを聞いて、何か胡散臭さというか、変な違和感を感じました。
違和感の原因は何だろうと考えたら、すぐに分かりました。その方は「ESなくしてCSなし」を「ESはCSに優先する。何よりもESを真っ先に考える会社がいい会社だ」という意味で使っていたのです。

 

 

会社の利害関係者(ステークホルダー)は株主、顧客、従業員、取引先、地域社会など複数にわたるので、「株主、顧客、従業員のうち、どれを優先するか」ということはよく論じられますが、その発想自体が経営者としてはあまりレベルが高くないように感じます。

 

大切さの順番をつけるというのではなく、「どのように従業員満足を高め、どのような価値を顧客に提供し、それを会社の成長や地域への貢献にどう結びつけるか」といった全体像をデザインするのが経営者の仕事であるはずです。

 

 

「ESなくしてCSなし」はその通りだと思いますが、ES>CSと単純化して考えるのではなく、CS向上→会社の成長につながるESとはどのようなものか、という広い視点で捉えていきたいものです。